深遠なる世界 チベット曼荼羅の神秘
ただそこにあるだけで、チベット密教の宇宙観の核心へと精神を誘い、悟りの境地をもたらす崇高なるチベット曼荼羅。
チベット曼荼羅とは?曼荼羅とはサンスクリット語の“マンダラ”の音に漢字を当てた名称で、本来は「完全であり円満を意味する円」、または「本質・根源」の意味を示します。チベット密教の修行僧は今でも修業の一環として、仏教の世界観を定められた法則に則った形で曼荼羅を描いています。また、ネパールのカトマンズ盆地に古くから居住するネワール族には絵師カースト“チトラカール”が存在し、その姓を持つ絵師達もまた、御仏や菩薩を敬う心、悟りに向かう精神を先祖代々伝承し、細密を極めた筆致と揺るがざる信仰心のもと曼荼羅を描き続けています。
修行僧やチトラカールの絵師らが描く肉筆曼荼羅は、その性質から一般の目に触れることはありませんでした。しかし寺院の維持や修復の費用にあてがうため1970年代頃より有力な信者に有償で配布されるようになり、それらが極まれに市場に出回るようになりました。
数カ月から数年の歳月をかけ
描かれる崇高な宇宙観!
チベット曼荼羅は貴石を粉砕した岩絵の具に膠を混ぜたもので描かれます。赤は珊瑚、青はラピスラズリ、緑はマラカイト、黄色はアラゴナイトなどで、金色だけは本物の金粉が使われます。その価値は誰が描いたかは勿論、絵のサイズや繊細さによっても異なりますが、金粉を多く用いたものほど高価とされます。制作には月単位の時間を要し、複雑なものだと数年かけて描かれるチベット曼荼羅は、紙ではなく布地に描かれることも特徴の一つです。
日本の密教では胎蔵界と金剛界の両曼荼羅が突出して用いられますが、さまざまな曼荼羅が用いられることもチベット密教の大きな特徴となります。
カーラチャクラ曼荼羅 マイラ上師作
カーラチャクラとは、チベット密教の最奥義 無上ヨーガ(瑜伽)・タントラの代表的な聖典で、かのダライ・ラマ十四世は著書『ダライ・ラマの密教入門(光文社)』の中で「このマンダラの本質は『光』」、「正しく描かれ、加持されたマンダラを見ただけでも、何劫にもわたって積み重ねてきた悪業を清めることが可能」と記しています。「カーラ」は時間、「チャクラ」は存在を意味することからカーラチャクラ曼荼羅は「時輪曼荼羅」とも呼ばれ、あらゆる時間は存在の中にあり、あらゆる存在は時間の中にあることを表す曼荼羅です。
たまふり屋でご紹介するお品は修行僧が描いたものではなく、ラマ(上師)であるMaila(マイラ)師によって描かれた作品のためひときわ貴重なものとなります。
肉筆曼荼羅だけが放つ清浄無垢なパワー!